CSR評価のしかた

前回の記事でも紹介しましたが、サスティナビリティには環境、人権、ガバナンスなど多くの事項が含まれています。
どこまでやれば良いのか、はっきりとしたゴールがある性質のものではなく、どんな存在であるのか、がポイントとなる為に、困惑される方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

CSR(企業の社会的責任)を評価する為には、まずは以下の大枠の取組みピラミッドが参考になります。

Carroll, 1991

企業の成績は、一般的にはいかに売上・利益を上げるかで評価され、良い成績を収める事が求められる事項の大前提となっています。そして法律に違反しないこと、遵法性が求められます。ここまでは一般的には当然の企業責任と考えられている箇所だと思われます。
更には事業内容の倫理性についての諮問、より良い行いや慈善性・貢献性があることと区分することが出来ます。


この慈善性・貢献性について、更に取組みの段階を分類したピラミッドが以下となります。

このピラミッドの特徴は、上記で紹介したキャロルのピラミッドの頂点から最下層が始まっている点と、「~であるべき」という視点から、「自らの行い」に変わっている点です。
一般的なビジネス視点から、主体的な取組みに向かって上昇しています。

主観的・客観的に見て、現在の組織の社会責任に対する取組みは、どの程度であるのか、定性的な分析をすることが出来ます。

最下層の慈善的・貢献的取組みから、評判の管理、社会への呼びかけ、社会問題への取組み、社会的リーダーシップを執る事までの階層の分類です。
何もしないよりは良いけれど、良い事をしているアピールなどの、自己利益から、利他となる活動をし、影響を与え、より戦略的に効率化し、周囲に影響を及ぼすといった内容です。

ビジネススクールで取り上げられている事例の1つをご紹介します。


”アメリカの事例ですが、ウォルマートの洗剤購買担当者は、これまで大きなボトルで売られていた液体洗剤の濃縮化が実現すれば、1度の輸送の際により多くを運べるようになり、更にはそれによって輸送の際のCO2排出削減に繋がるのではないかと考えました。調達している液体洗剤のメーカーは複数あり、それぞれの担当者に液体洗剤を濃縮した製品を作って貰えないかと交渉したところ、売り場の棚で自社製品が小さく目立たなくなって売れなくなるのでそのような製品を作るメリットを感じられない。という反応がほとんどの担当者から返って来ました。
そこで、洗剤購買担当者は、すべての洗剤メーカーを集め、なぜ液体洗剤の濃縮化・商品の小型化が必要なのかを全員に伝えました。自分たちの目の前の売上ではなく、社会の人々の未来の為に行うものであると説得し、最後の一人が納得するまでその重要性を訴えました。そしてすべての洗剤メーカーの合意を得て、液体洗剤の小型化を図り、結果として輸送にかかるCO2排出負担を軽減させることに繋がったのです。”

液体洗剤1本を濃縮化したものと比較するだけでは、その効果は大したものではないように思えますが、このケースのポイントは、リーダーシップを執って業界内のすべての取引先を説得し、今後の商品輸送にも大きな影響を与えた点です。

ステークホルダーに対して社会に良い方向に主体的に行動して影響を与える事が出来る組織行動は、企業の社会的責任に於いて最高レベルの行いと言えるでしょう。
ご参考までに、ご自身が所属する組織について点検してみることをお勧めいたします。